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様子見で本当に大丈夫?放置することによる成長期のリスクとは

「子どもの歯並びが気になるけれど、まだ乳歯もあるし、永久歯が生えそろってからでいいかな?」
このように考えて、お子さまの歯並びや口元の問題を「様子見」してしまう親御さんは少なくありません。

しかし、私たち歯科医療に携わる立場から見ると、この「様子見の期間こそが、実はお子さまの健康と成長にとって最も大切なチャンスを逃している可能性がある」のです。

当院が行うオルソ矯正(Orthotropics®)では、歯並びの乱れの原因を「顎の骨格の発育不足」や「お口の悪習癖」にあると捉え、問題の根本にアプローチします。

そして、この治療が最も効果を発揮するのは、顎や顔の骨格が急速に成長する幼少期です。
まさに一般的に「様子見」で済まされがちな時期こそが、最も重要な成長のタイミングなのです。

この記事では、お子さまの歯並びや口元の問題を放置すると、成長期にどのようなリスクが生じうるのかを、専門的な視点からわかりやすく解説していきます。

骨格の成長は待ってくれない!

お子さまの顎の骨は、一生のうちで特定の時期にしか効果的に成長してくれない、いわば“時限付きのチャンス”です。
特に、上顎(上の歯が生えている骨)の発育は10歳前後でほぼ完了すると言われています。

この上顎の発育こそが、きれいな歯並びを作るための土台となります。
土台が小さければ、後から生えてくる永久歯は並びきれずにデコボコの歯並びになってしまいます。

「様子見」が引き起こす決定的なリスク

成長期に口呼吸や舌の癖といった悪い習慣を放置すると、顎は本来遺伝的に持っている大きさまで成長できなくなってしまいます。

上顎の成長不足(劣成長)

上顎が前方へ十分に成長せず、奥に引っ込んだり、狭く縦長になるなど、骨格の発育が不十分になります。

スペース不足の確定

永久歯が適切に生えるスペースが確保できず、歯並びのガタつき(叢生)や、出っ歯・受け口といった不正咬合が固定化してしまいます。

この時期を過ぎてしまうと、顎の骨の成長を利用した非抜歯矯正が難しくなり、将来的には健康な歯を抜いてスペースを作る必要が出たり、場合によっては外科手術を伴う大掛かりな治療が必要になる可能性が高まります。

歯並びだけではない!全身と健康への悪影響

歯並びの悪さは、見た目の問題だと軽視されがちですが、実は全身の健康や生活の質(QOL)に深く関わっています。

リスク1:口呼吸による健康被害

歯並びが悪い子の多くは、口がポカンと開いている「口呼吸」の習慣を持っています。

  • 免疫力の低下:鼻のフィルターを通さない空気が直接喉や気管に入るため、細菌やウイルスが体内に侵入しやすくなり、風邪やアレルギー体質になりやすくなります。
  • 集中力の低下:口呼吸は酸素の取り込み効率が悪く、脳への酸素供給が不十分になりがちです。
    これにより、授業中に集中できなかったり、落ち着きがなくなったりする原因の一つになります。
  • 睡眠の質の低下:口呼吸や顎の成長不足は、気道を狭くし、いびきや睡眠時無呼吸を引き起こすリスクを高めます。
    発育ホルモンが多く分泌される睡眠の質が低下すると、健やかな成長を妨げます。

リスク2:消化器官への負担

デコボコした歯並びや、噛み合わせの悪い不正咬合の状態では、食べ物をしっかり噛み砕くことができません。

噛み合わせが悪いと、食べ物が十分に咀嚼されず、そのまま胃や腸に送られます。
これにより、消化器官に大きな負担がかかり、栄養の吸収効率も低下してしまいます。

癖や機能の固定化:治りにくい体質になる

小児矯正で重要視されるのは、歯並びを悪くした原因である「悪い癖(悪習癖)」を取り除くことです。
しかし、この悪い癖も、長く続けば続くほど、お子さまの体に染み付いて固定化してしまいます。

悪い癖の例 放置によるリスク
口呼吸 舌の位置が下がり(低位舌)、さらに顎の成長を妨げる悪循環を繰り返します。
舌を突き出す 嚥下(飲み込み)の際に舌が歯を押す力が加わり続け、開咬(前歯が閉じない状態)がより治りにくくなります。
頬杖・うつぶせ寝 片方の顎に持続的に力が加わり、顎関節のズレや顔の非対称性(左右の歪み)を重度に悪化させます。

成長期にこれらの機能的な問題を改善できなかった場合、大人になってから矯正治療をしても、矯正装置を外した後に「後戻り」してしまうリスクが非常に高くなります。
これは、歯を並べても、根本原因である「舌の位置」や「お口の機能」が改善されていないため、元の悪い力に歯が押し戻されてしまうからです。

早期治療は「投資」であり「予防」です

「様子見」の期間に早期治療を始めることは、単に歯を並べるためではなく、お子さまの「生涯の健康」と「顔の骨格の健全な発育」という未来への「投資」です。

早期治療の最大の目的は、以下の2点に集約されます。

  • 顎の成長ポテンシャルを最大限に引き出す
  • 悪習癖を断ち切り、正しいお口の機能(鼻呼吸、正しい舌の位置)を身につけさせる

この時期にしかできないアプローチを逃すことは、将来的に治療の選択肢を狭め、時間的・経済的な負担を増やすことにも繋がります。

お子さまの健やかな成長のために、少しでも気になるサイン(口呼吸、いびき、おかしな噛み方など)があれば、新田歯科医院にご相談ください。
専門的な視点から、今すぐ介入すべき問題なのか、それとも本当に様子見で大丈夫なのかを正確に判断いたします。