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根本的な原因を治療するORT矯正とは?なぜ従来の矯正と違うのか

「うちの子の歯並び、どうにかしたいけど、遺伝だからしかたないよね…」
そうお考えの親御さんは多いのではないでしょうか。お子さんが10歳未満であれば諦めるには早すぎます。

しかし、当院が採用しているORT矯正の考え方は、そのアプローチが根本的に異なります。ORT矯正は、「歯並びが悪くなったのはなぜか」という根本的な原因に焦点を当て、その原因を取り除くことで、お子様が本来持つ健全な成長の可能性を引き出すことを目指します。

つまり「歯が並ぶ環境さえあれば、歯は勝手に並ぶ」という考え方です。

この記事では、「なぜ根本的な原因の治療が必要なのか」「従来の矯正と何が違うのか」を分かりやすく解説します。

歯並びの悪さの原因は「顎のサイズ」と「悪い習慣」

歯並びが悪くなるのは、遺伝だけが原因ではありません。実は、多くのケースで「顎の骨が十分に成長しなかったこと」と「日常生活の悪い習慣や環境」が深く関わっています。

原因1:顎の成長不足

本来、人間の顎の骨は、すべての永久歯がきれいに並ぶだけの十分な大きさになるようデザインされています。しかし、現代の子供たちの多くは、食生活の変化や運動不足、そして次に述べる「悪い習慣」の影響で、顎が遺伝的なポテンシャル通りに大きく成長できていません。
家で例えるなら、設計図通りの大きな家を建てるための「基礎(土台)」が小さいままになってしまっている状態です。

原因2:悪いお口の習慣

顎の成長を妨げる主な習慣には、「口呼吸」「舌の位置が低い(低位舌)」「間違った飲み込み方」などがあります。

  • 口呼吸:鼻ではなく口で呼吸すると、舌が正しい位置(上あごに舌がついた状態)から下がってしまいます。舌は上あごを内側から広げる「天然の矯正装置」の役割を担っているため、舌が下がると上あごが横に広がらず、狭く、V字型になってしまいます。
  • 悪い姿勢:頬杖やうつ伏せ寝は、顎に持続的な外圧をかけ、顔の骨格や顎関節を左右どちらかに歪ませる原因となります。

根本的な原因を治療するORT矯正とは

ORT矯正の目的は、単に曲がった歯を真っ直ぐに並べることではありません。最も重要なのは、「顔の骨格を正しい方向に、最大限に成長させること」です。

アプローチ1:顎の成長方向を誘導する

子供の顎の骨は、まだ柔らかく、成長期には方向性を変えることができます。
ORT矯正では、専用の装置やトレーニングを使い、上顎と下顎が前方に、水平に成長するように誘導します。

  • 理想的な成長:顔が平面的ではなく、立体的に、前に向かって成長することで、横顔のバランスが整い、鼻が高く見えるなど、顔貌全体が美しく、健康的に発育します。
  • 非抜歯の可能性:顎を本来の大きさに広げることができれば、永久歯が並ぶための十分なスペースが確保でき、仮に成人矯正が必要となったとしても健康な歯を抜く抜歯矯正の可能性を大幅に減らすことができます。

アプローチ2:口腔筋機能療法(OMT)で習慣を改善する

装置による治療と並行して行うのが、OMT(口腔筋機能療法)、つまり「お口の筋肉のトレーニング」です。

  • 舌のトレーニング:舌を上あごの正しい位置に保ち、正しい嚥下(飲み込み)ができるように訓練します。これにより、舌が「天然の矯正力」として働き始め、治療後の後戻りを防ぎます。
  • 鼻呼吸の習慣化:鼻呼吸を促すことで、正しい舌の位置を維持しやすくなり、健康面(免疫力、集中力)も向上します。
  • 唇のトレーニング:唇の筋力をあげることで、筋力不足による「お口ぽかん」を予防します。
  • 正しい嚥下(飲み込み)の獲得:乳児期の飲み込み方が残っていると、間違いなく歯並びは悪くなります。成人型嚥下と言って、3~4歳までに獲得すべき飲み込み方ができていない場合は、早いうちの改善が必須となります。

従来の矯正治療との決定的な違い

項目 従来の矯正治療(永久歯期) ORT矯正(早期治療)
治療の目的 「曲がった歯を真っ直ぐにする」こと(歯を主役とする) 「顎を育て、顔の骨格を健全にする」こと(骨格を主役とする)
主な対象時期 永久歯が生え揃ってから(12歳以降が多い) 顎の成長期(主に6歳~10歳頃)
抜歯の可能性 スペース不足の場合、抜歯が必要になることが多い。 顎を拡大することで、抜歯のリスクを大幅に減らせる。
アプローチ 歯を動かす力(ワイヤーやアライナーというマウスピース)が中心。 顎の成長と筋肉の機能改善が中心。装置も使いますが、顎を大きくすることが目的。
期待できる効果 歯並びがきれいになる。 歯並びに加え、顔の輪郭、姿勢、鼻呼吸などの改善が期待できる。

従来の矯正は、例えるなら「狭い土地に家を建てた後、無理やり家具を詰め込む」ようなもの。ORT矯正は、「まず土地(顎)を広げてから、設計図通りに家具(歯)を配置する」**イメージです。

なぜ「早期治療」が重要なのか

ORT矯正の真価は、お子様の顎がまだ成長している時期(8歳がピークで、チャンスタイムは10歳が限界)にしか発揮されません。

成長期は、骨格が最も変化しやすく、悪い習慣もまだ固定化していないため、少ない力で、効率よく良い変化を起こすことができます。この時期を逃してしまうと、顎の成長を利用した根本治療は難しくなり、治療が長期化したり、大きな手術を必要とする外科的アプローチが必要になったりするリスクが高まります。

お子様の健やかな成長と、将来の健康的な笑顔のために、この「成長のチャンス」を見逃さず、ぜひ一度ご相談ください。当院では、歯並びだけでなく、お子様の持つ本来の美しさと健康を引き出すことを目標に、治療を行っています。